東京でカラヴァッジョ 日記

Kと申します。ブログ17年目です。西洋美術、特にイタリアのルネッサンス・バロック美術に関心を持っています。2025年5月5日、goo blogから引越してきました。

「装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子」(ちひろ美術館・東京)

◾️2025年10月31日〜2026年2月1日
◾️ちひろ美術館・東京
 
練馬区石神井に所在する「ちひろ美術館・東京」を初訪問。
西武新宿線上井草駅から徒歩で、特に迷うこともなく、だいたい公称の7分ほどで到着する。
練馬区らしい住宅地内にある。

(↑千川通り側から)
 
初訪問のお目当ては、岡上淑子のフォトコラージュ作品。
2025年9月に刊行されたばかりの行司千絵氏の著書『装いの翼 おしゃれと表現と―いわさきちひろ茨木のり子岡上淑子』(岩波書店)を起点とするという本展。
いわさきちひろ茨木のり子岡上淑子の3人展だが、ちひろがメインで、岡上の出品数は限られるだろうことを承知したうえでの訪問。
 
 
展示室は4つあって、1階の展示室1と展示室3がちひろ、2階の展示室2が茨木と岡上、1階の展示室4が3人の総合紹介となっている。
当然、最初に2階の展示室2に向かう。
 
岡上の出品は、展示順に記載すると、
 
《ポスター》1950年、東京国立近代美術館
《夜》1951年、東京国立近代美術館
《海のレダ》1953年、個人蔵
《彷徨》1956年、個人蔵
《室内》c1953年、東京国立近代美術館
《閃光》c1955年、東京国立近代美術館
《終曲の午後》1952年、東京国立近代美術館
《孤独の讃歌》1952年、東京国立近代美術館
 
計8点!
2019年の回顧展以後は、一度に2点が最多であった私は、8点が並ぶ風景にテンションが上がる。
いずれも、2019年の回顧展以来の対面である。
(↓4点の作品画像あり)
 
 
参考資料も楽しい。
 
「東洋永和女学校の学級日誌」
昭和19年8月14日および8月15日、岡上が当番の日のページが開かれている。
東洋英和女学院 史料室だよりNo.104』2025.5.9発行にて、東洋永和女学校時代の岡上をテーマとする、行司千絵氏による特集記事が掲載されており、この学級日誌も写真付きで取り上げている。
 
 
岡上淑子コラージュ展」案内はがき
1953年1月4日〜10日、神田駿河台のタケミヤ画廊で開催された初個展。
約30点が展示されたらしい。
瀧口修造による個展の案内文(抜粋)〉
岡上さんは画家ではありません。若いお嬢さんです。獨りでこつこつグラフ雑誌の切抜きをコラージュ(貼合せ)して夢そのものを描きました。不思議の国のアリスの現代版がこのアルバムになりました。
 
 
瀧口から岡上への書簡(1953.1.31)
初個展終了後の書簡
(以下抜粋)
だいぶコラージュ旋風が吹きまくってあなたも驚いたでしょう。僕も少々驚きました。世間ではすぐコラージュ博士にしますが、そのうち静かになったらあなたの仕事への欲望がまた戻ってくるでしょう。いつまでもあの純粹な気持をもちつゞけてください。それがコラージュであろうと何であろうと構いません。
 
 
岡上淑子コラージュ展 第2回」案内はがき
1956年5月22日〜31日、タケミヤ画廊で開催された2度目の個展。
約20点のフォトコラージュと約10点の写真が展示されたらしい(その前年頃からフォトコラージュ制作に限界を感じ、写真にも取り組みだしていたようだ)。
翌1957年12月、画家の藤野一友と結婚し、以降、フォトコラージュの制作から離れる。
 
 
岡上から瀧口への書簡(1968.4.1)
1967年12月、藤野と離婚したのち、母と息子とともに高知市へ転居した翌年の書簡。
高知市北西部のみかづき(初月)の里に新居がまもなく完成するなど近況を伝えるとともに、フォトコラージュを制作していた時代の自分のことを振り返っている旨が記される。
 
 
『LIFE   1955.9.12号』
グラフ雑誌『LIFE』は、岡上がその掲載写真をフォトコラージュに使用した雑誌の一つ。
出品作《閃光》に使用した写真が掲載された雑誌実物が展示される。
平型展示ケース内の『LIFE』のほぼ真後ろに、《閃光》が壁面展示され、見比べることができるのは大変嬉しい。
作品下部の男性周辺の雷光、後面を走るものは概ね元写真の利用であるが、前面を走るものは切り貼りしたようだ。
作品全般に言えるが、コピーするわけではなく、拡大縮小するわけでもなく、おそらくスペアを持っているわけでもなく、こんなに繊細な切り貼りを一発で決めていくのだろう、たいへんな技術とセンスだと毎度感心する。

 
ちひろと茨木は一瞥程度で、滞在時間の大半を岡上コーナーで過ごす。
8点ともじっくり観るが、特に《海のレダ》《彷徨》《終曲の午後》に時間を費やす。
 
これで、2019年の回顧展後の岡上鑑賞は、個人蔵2点と東京国立近代美術館所蔵20点のうち15点、計17点となる。